近年、中層集合住宅や建物の8割以上が外装をタイルで仕上げられており、塗材・塗料仕上げは排除されてきた。その理由は供給側であるディベロッパーや設計士の一方的な「タイルの方が高級感がある」という考え、しかしタイル一辺倒の牙城が一気に崩れつつある。塗材・塗料への回帰はあるのか、外装タイルがこれだけ普及している国は日本以外では韓国と台湾だけ、海外の人たちにとってタイルだらけの外装はとても奇異に映る「タイルはデザイン的に単調で、バリエーションも限られている。本当に日本人はタイルの外装が好きなの?」と疑問を抱くようだ。
外装タイルは高級との思い込みは供給側の思い込みの面が強い、居住者の多くはタイルを高級と見ているわけではない、ある建築設計士は打ち明ける「特に日本の場合、大学で建物のデザインや美的な感覚について学ぶカリキュラムがなく、結果構造などハード中心で建物を設計しがちになる」という、タイルが高級とのイメージはあまり根拠がないことが分かる。
「外装タイル=高級」に対し「塗材・塗料=安物」はいつごろから定着したのだろうか、民間マンションの大量供給に伴ってというのが関係者の見方だ、つまりここ30年余りで集合住宅の外装から塗材・塗料が駆逐されたことになる、この時期、住宅外装の分野では同様にサイディング材が主流になっていく。
これは対外的要因だが、塗料業界側の要因を指摘する意見もある「タイルの進出に対し、デザインやコストなど塗材・塗料のメリットできちんと対抗してこなかった」というのだ、事実「タイルは高級」との考えは塗料・塗装の業界人側にも根強く、しかるべくして敗退したといえる。
ところが外装タイルが急速に凋落し始めている、そのきっかけはタイル落下事故、落下の主原因は屋上やタイル目地からの水の侵入により、下地がふくれタイルが剥がれるところにある、人身事故も起こり、国土交通省はその対策として新築時から10年経過した時点でのタイル定期点検を義務づけた、費用は当然集合住宅の居住者(管理組合)の負担となる、長期修繕計画にないコスト負担となり、悲鳴が上がる。
しかもタイルの剥離メンテナンスの費用は2万円/㎡が相場、新築タイルは8,000円/㎡に比べコストがかかる、タイルの場合、同じ色のタイルの製造コストが高くなるためだ。
もうひとつタイル業界を圧迫する要因がある、新築物件の減少から仕事が激減し、タイル技術の継承が困難になっている、職人不足は仕上専門工事業の中でも深刻で「一人前のタイル職人になるには10年以上かかる」世界を敬遠する傾向が強まっているのだ。
このような状況のなか、外装タイルから、無機質塗材・液体ガラス塗料への転換が始まっており、特に安全性やデザイン性とフレキシビリティ(柔軟性)の面でタイルを上回る点、メンテナンス性でも省資源・省エネに直結するメリットがあり、また、建物の美観の維持と長寿命化につながる。
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